猫は抱くもの

「猫は抱くもの」、大山淳子さんの最新作のタイトルです。発売日に前に拝読する機会があり、こちらの特設サイトにコメントを掲載していただきました。

うちの猫を抱っこしているときよく思うのは、なぜ彼らはこんなにも人が抱きやすいサイズでこんなにもフィットするのかしらということ。
猫は人間に抱かれやすいサイズに進化し、他の動物たちよりもより人間との距離の近い種となることで現在の繁栄を手に入れたのかなぁなんて思っちゃうこともあります。

そんなことをいつも思っていたから小説の登場人物の言葉でもある「猫は抱くもの」というこのタイトルに読む前からとても共感してしまいました。
ここに描かれた猫と人間のその微笑ましさ、時に顕れる人間の身勝手さのドラマに一喜一憂しているうちにあっという間に読み終わってしまいます。

この小説をに出てくる風景は、私の記憶の中の風景にオーバーラップして心の奥の方で眠っていた風景がふっと思い出されていきました。
私の幼少期よりうちには猫がいて、当時は飼い猫たちも外の世界へと気軽にでかけていたこともありました。そして、明け方や夕方になると駐車場や空き地で猫の集会が開かれていたのです。
出かけて帰ってこない猫を探しにいくこともよくありました、また学校へ出かけた私を帰り道の途中までいつも迎えに来てくれていた猫もいました。近所の猫好きのおばさんが朝方や深夜のことを「猫時間」と呼んでいたなぁとか、当時飼っていた猫が交通事故に遭ってしまいボロボロになって3日後に帰ってきたこと、その教訓としてうちの猫は完全室内飼いに至ることとか…。
私たち人間と猫との物語は途切れることなくもっとずっと昔から続いてきて、どれが正解であるとかは私にはわからないし、その形は様々変わっていくけれどこれからもずっと続きていくのだなぁという思いに耽るのでした。

おひさまのようなあたたかさが胸に残る一冊です、猫好きのみなさまには特におすすめします。

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